見積書は金額だけを知らせる紙ではありません。何を、いくつ、いつまでに、いくらで行うかを依頼前にそろえる道具です。最初は表計算や文書ソフトの1ページで十分です。案件名、作業の内訳、追加条件、納期、支払条件を具体的にし、PDFで送った内容と相手の承認を残します。
この記事でわかること
- 作成時間:聞き取り15分+見積書作成15分を最初の目安にする
- 最低限:相手、自分、発行日、件名、内訳、合計、納期、有効期限、支払条件
- 金額:『一式』だけにせず、数量・単価・含まれる修正回数を分ける
- 受注:承認後は納品物、期日、報酬、支払期日を文書で確定する
見積もり前に15分で聞く6項目
内容が曖昧なまま安い金額を先に出すと、作業が増えても請求しにくくなります。厚生労働省の自営型テレワーカー向け案内も、業務内容を事前に十分すり合わせ、金額を確定できない場合は概算として後で再見積もりする方法を案内しています。
- 目的:何のために依頼するか
- 納品物:文章、画像、ファイル、作業など何を渡せば完了か
- 数量:ページ数、記事数、商品数、作業時間など
- 期限:希望日と、その日を過ぎると困る理由
- 素材:相手が用意する写真、文章、アカウント、資料
- 確認方法:担当者、修正回数、最終承認者
見積書に入れる9項目
宛名
会社名、部署、担当者名を確認し、『株式会社○○ 御中』と『○○様』を重ねないようにします。
自分の情報
屋号または氏名、連絡先、必要に応じて住所を記載します。請求書と表記をそろえます。
発行日と見積番号
発行日と『EST-202608-001』などの番号を付け、修正版を見分けられるようにします。
件名
『○○店 ホームページ文章作成』のように、案件を1行で特定します。
作業・数量・単価
作業を分け、1ページ、1本、1時間など相手が確認できる単位で示します。
小計・税・合計
計算結果と最終的な支払見込み額を確認します。税の扱いが分からない場合は会計担当や税理士へ確認します。
納期と納品方法
『素材受領から10営業日』『PDFをメールで納品』など、開始条件と渡し方を記載します。
見積有効期限
30日など、自分が同じ価格と日程を確保できる期間を具体的な日付で示します。
支払条件と備考
支払期日、振込手数料、修正回数、追加料金、相手が用意する素材をまとめます。
金額と作業範囲の書き方例
例として、ホームページ5ページ分の文章作成を考えます。『文章作成一式 75,000円』だけでは、文字数や修正が何回までか分かりません。以下のように分けると、追加依頼を判断しやすくなります。金額は説明用なので、自分の単価と作業量に置き換えてください。
- 構成確認:1式 × 10,000円=10,000円
- 文章作成:5ページ × 12,000円=60,000円
- 公開前の文面確認:1式 × 5,000円=5,000円
- 小計:75,000円(税・合計は自分の取引条件に合わせて表示)
- 含むもの:オンライン打ち合わせ1回、各ページ2回までの修正
- 追加:6ページ目以降は1ページ12,000円、大幅な構成変更は再見積もり
そのまま直して使える備考欄
守れない納期や対応できない修正回数を書かないことが重要です。相手の指定書式がある場合はそれを使い、不明点は送付前に確認します。見積書の備考だけで契約上の条件をすべて代替できるとは限らないため、継続案件や高額案件は契約書・発注書も整えます。
- 納期:必要な写真・資料をすべて受領してから10営業日を予定します。
- 修正:初稿提出後、各ページ2回までの文面修正を含みます。構成変更と追加ページは別途見積もります。
- 素材:商品情報、写真、現在の料金表はご依頼者様にてご用意ください。
- 有効期限:本見積もりの有効期限は2026年9月13日です。
- 支払い:納品月の翌月末までに、指定口座へお振込みください。振込手数料はご負担ください。
PDFで送る前後の6ステップ
計算をもう一度確認
数量×単価、小計、税、合計を電卓または表計算で照合します。
PDFにして名前を付ける
『20260814_見積書_相手名_案件名.pdf』のように、日付、種類、相手、案件を入れます。
自分宛てに開いて確認
スマホでも開き、文字切れ、ページ分割、古い口座や住所がないかを確認します。
メール本文に要点を書く
件名、合計、納期、有効期限、確認してほしい点を本文にも短く書きます。
承認を文書で受ける
『この内容でお願いします』というメールや発注書を保存し、口頭だけで着手しません。
受注条件を確定する
納品物、期日、検査、報酬、支払期日などを契約書、発注書、メール等で確認します。
フリーランス法と見積書の関係
公正取引委員会の案内では、発注事業者がフリーランスへ業務委託した場合、当事者名、委託日、業務内容、納品・役務提供の期日と場所、検査完了期日、報酬額と支払期日などを、書面またはメール等で直ちに明示する必要があります。見積書を出しただけで必要事項がすべて確定したとは限りません。受注者側も、正式発注後の文書に不足がないかを確認し、送受信したPDFとメールを案件フォルダへ保存します。
30日間は『見積提出数』『承認数』『作成にかかった分数』『見積後の追加作業件数』を記録します。10件出して4件受注なら受注率40%です。受注率だけで値下げせず、断られた理由が予算、納期、範囲、信頼のどれかを確認します。追加作業が多い場合は備考と聞き取り項目を先に直します。
迷ったら、まずここから
- 作成時間:聞き取り15分+見積書作成15分を最初の目安にする
- 最低限:相手、自分、発行日、件名、内訳、合計、納期、有効期限、支払条件
- 金額:『一式』だけにせず、数量・単価・含まれる修正回数を分ける
- 受注:承認後は納品物、期日、報酬、支払期日を文書で確定する
よくある質問
見積書に印鑑は必要ですか?
相手の指定書式や社内手続きを先に確認します。印鑑の有無だけで内容の明確さは決まりません。誰が、何を、いつまでに、いくらで行うかを文書でそろえることを優先します。
見積書はExcelのまま送ってよいですか?
相手が編集用ファイルを求めていなければ、表示が崩れにくいPDFで送る方が確認しやすいです。自分の編集用原本と送付したPDFを両方保存します。
金額をまだ決められないときはどうしますか?
『概算』と明記し、前提となる数量、対象外、再見積もりの時期を示します。必要な情報がそろう前に確定額のように見せません。
見積書を承認されたらすぐ作業を始めてよいですか?
納品物、期日、報酬、支払期日、追加作業などの取引条件が文書で確定しているか確認します。高額・継続・権利関係を含む仕事は契約書や発注書も整えます。
参考:厚生労働省 自営型テレワーカーのためのハンドブック 第2章/厚生労働省 初心者向け:契約について/公正取引委員会 フリーランス法特設サイト